新王国設立のためこの

2016年01月25日



「ふん、なるほどな水車小屋に隠れたか。ザラムよ、ひと思いに焼き払え!」
「おやおや、ヨミの戦士にしちゃあ子供相手にそんな事までするとは落ちたものだねえ。見ちゃいられない」
「シルティ、余計な事を言うな、ダーマの命令は絶対だ。お前も知っているだろう」
そう言うとゴラムはミナに巻き付けた糸を器用に交差させ一気に左右に引き絞った。
辺り一面に血しぶきが飛び散り、ミナの体が幾筋も深く切り刻まれた。血だらけの巫女は声も上げず倒れた。ゴラムはしかし冷淡に白装束のアゲハに言った。
「所詮、覚醒もしていない巫女などこんなものだ。シルティ、残りの生気はお前にやろう。少ししか残っていないがな。お前の術は次にとっておけ、俺はガラムのところへ行こう…」
新王国設立のためこの

「さて、巫女たちの生気をいただこうかね」
ラナに近づき口吻を伸ばそうとしたシルティはその巫女が持っていた刀が粗末な事に気付いた。ガラムを切ったのは刀ではなくラナの持つ『ヒメカの力』だったのだ。力は戻っていた、それをなぜ使わなかったのだろう。ラナに呪力のかけらも残ってはいなかった。傍らのミナの体はあまりにも惨かった。ラナの上着をとりミナにかけようとした時シルティはミナの『最期の術』にかかった。彼女は暫くそこにいたが、どこかへ立ち去っていった。親子二代のオロスの巫女はヨミの戦士によりその最期を終えた。時を待たずに、大きな音とともに裏の水車小屋が崩れ落ちた。

「どうだ、ゴラム。娘は死んだか?」
「とっくに反応はない、帰るぞ。次はシルラそしてマンジュリカーナだ…」
水車小屋の中では、気を失った娘の上に焼けた屋根材が次々と崩れ落ちていった。その胸には『守り刀』が光り輝いていた

「パリーン」
香奈は夫のお気に入りのコーヒーカップを落とした。オロスの巫女の最期をそのとき知ったのだ。

「そうかそれでいい、オロシアーナの最後は見届けたのだな」
ダーマは上機嫌だった。それは黒衣の下の体が成長している事にも関係していた。
「ムシビトに寄生したわしの分身がこうして養分を送ってくる。かつての様に…」

「シルラ王の方は片付くのか?ダーマ」
「実験失敗で意外と簡単にな、ククククッ」


第三.五章 闇の巫女『シルティ』

<新吉>カタビラアゲハ『シルティ』は過去の恨みからダーマの仲間となった。始まりはこの話からはじまる。(エピソード2.3と重複?抜粋しています)

さまようアゲハ

「ついに『ラクレス』様の動く時がきた」少し興奮して『フランタイヤンマ』は恋人の『カタビラアゲハ』に告げた。

「ヤンマ様、ご武運をお祈りしています」
「ああ、シルティ(カタビラアゲハの名)。王の理想、命を賭けよう。その後、きっと私の妻になってくれ」

「もちろんです、そのために…」
彼女はセブリアのフランヌとともに、巫女の修行をしていた。止まぬ大雨と原因不明の奇病『眠り病』が蔓延するセブリアを救うために、王国をもう一度作り直す。『イトの封印を解き放ち自らその寄り代となり王国を再びつなげる…。』何度彼から聞かされたろう。そのために王は蜂起するのだという。ラクレスを引き止めていた女王もついに病に倒れたのだ。シルティは本来それを止めねばならない。しかし彼女はセブリアの巫女としてではなく、愛しい男の無事を祈る、一人の女を選んだ。

ヤンマは二度と戻ることはなかった。
「きっと、何かの間違い、ヤンマ様が死ぬ訳はない。あの強く美しいヤンマ様が…」



Posted by やそれでは at 11:55│Comments(0)
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